インプラント治療では外科的な手術を行い、顎の骨にインプラント体(人工の歯根)を埋め入れます。
顎の骨とインプラント体が生体現象によって結合する数ヵ月間のあいだは、できるだけ、手術を行った患部に刺激を与えないようにすることが重要です。
インプラント手術後、患部付近の歯や仮歯で弾力のある肉や硬い物を噛んでしまうと、噛んだときの刺激によって顎の骨とインプラント体の結合がさまたげられるおそれがあります。
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骨結合がさまたげられ、インプラント体が安定しなくなる
(顎の骨にインプラント体が安定的に結合しない)
など、患部に刺激を与えたことが原因でインプラント手術が失敗。インプラント手術のやり直し(再手術)が必要になるケースも。
目次
■インプラント手術後におすすめの食べ物 いつから普通の食事が可能?
インプラント手術後は、できるだけ、患部に刺激を与えないように気をつけましょう。インプラントの手術後の食生活では、以下のような、あまり噛まずに済むやわらかい食べ物を中心とした食事を取ることをおすすめします。
①インプラント手術を受けた当日~2週間程度
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おすすめの食材:
おかゆ、やわらかく煮たうどんなどの麺類、プリン・ゼリー、赤ちゃん用の離乳食
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NGな食材:
弾力のある肉、硬い物、唐辛子・ごま・ナッツなどの挟まりやすい物、辛い物、大きなかたまりの肉・魚・野菜が入っている料理
インプラント手術を受けた当日~2週間程度は、患部がもっとも敏感な時期です。
仮歯の有無に関わらず、インプラント手術を受けた当日~2週間程度は、上記の「おすすめの食材」ような、あまり噛まずに済むやわらかい食べ物を中心とした食事を取ることをおすすめします。
おすすめの食材を中心に取ると共に、患部付近の歯や仮歯で弾力のある物・硬い物を噛まないように注意しましょう。
②インプラント手術を受けてから2週間~1ヵ月程度
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おすすめの食材:
おかゆ、おじや、やわらかく煮たうどんなどの麺類、舌ですり潰せるくらい具材を煮込んだ煮込み料理
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NGな食材:
弾力のある肉、硬い物、唐辛子・ごま・ナッツなどの挟まりやすい物、辛い物、大きなかたまりの肉・魚・野菜が入っている料理
インプラント手術を受けてから2週間~1ヵ月程度が経つと、患部以外の歯であれば、ほぼ、通常の食事を取れるようになっていきます。
しかし、油断は禁物。
本歯の人工歯を入れるまでは(インプラント手術後、3~6ヵ月程度)(※)、患部付近の歯や仮歯で弾力のある物・硬い物を噛まないように気をつけましょう。
(※)目安の期間です。患者様や口腔内の状態により、
本歯の人工歯を入れるまでの期間が異なります。
インプラント手術後、本歯の人工歯を入れるまでに
7ヵ月以上かかるケースもあります。
◎仮歯で積極的に噛むことは控えてください
患者様や口腔内の状態によりますが、インプラント手術後は患部に仮歯を入れることがあります。
仮歯、と聞き、「仮歯が入ったなら、仮歯で食べ物を噛めるよね?」と思うかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、仮歯で積極的に食べ物を噛むのはやめましょう。
仮歯で積極的に食べ物を噛むと、噛んだときの刺激によって顎の骨とインプラント体の結合がさまたげられ、インプラント手術をやり直さなければならなくなる場合があります。
[インプラント手術後の仮歯の主な役割]
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見た目のカバー(特に、前歯のインプラント手術では見た目を考慮して仮歯を入れることが多いです)(※)
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患部の保護
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発音を助ける
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歯列に空いている患部のすき間に、隣の歯が倒れ込むのを防ぐ
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本歯の人工歯を作製する際、位置・形状を計る目安にする
(※)前歯のインプラント手術後に仮歯を入れることを
保証するものではありません。患者様や口腔内の
状態によっては、大事を取り、仮歯を入れない
(入れられない)場合もあります。
■インプラント手術後の食事に採り入れたい、おすすめの栄養素
◎歯周組織の再生をうながすために、タンパク質・ビタミンC・カルシウム・鉄分を含む食事を取ることをおすすめします
インプラント手術後は、
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歯ぐきの創口の治癒
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顎の骨とインプラント体の結合(オッセオインテグレーション)
に数ヵ月(平均で3~6ヵ月程度)の治癒期間がかかります(※)。
(※)患者様や口腔内の状態により、治癒期間が異なります。
歯周病治療や骨造成が必要なケースでは、治癒期間を含む
全体の治療期間が1年以上かかる場合もあります。
治癒期間中は、歯ぐきの治癒・顎の骨とインプラント体の結合をうながすために、以下のような栄養素を豊富に含んだ食事を取りましょう。
①タンパク質
タンパク質を多く含む食材:
肉、大豆 乳製品など(弾力のある肉、大きなかたまりの肉はNG)
タンパク質は歯ぐきを修復・形成する材料になります。
②ビタミンC
ビタミンCを多く含む食材:
ブロッコリー・菜の花・ピーマンなどの野菜、レモン・いちごなどの果物(大きなかたまりの野菜・果物はNG)
ビタミンCは歯ぐきの再生をうながす作用があり、歯周組織を健康な状態に保ちやすくなります。
③カルシウム
カルシウムを多く含む食材:
乳製品、骨ごとの小魚、小松菜などの野菜、卵、高野豆腐、切り干し大根など
カルシウムは骨組織を修復・形成する材料になると共に、顎の骨とインプラント体の結合をうながします。
④鉄分
鉄分を多く含む食材:
赤身の牛肉、レバー(豚・鶏・牛)、イワシ・マグロなどの魚、赤貝など
(弾力のある肉、大きなかたまりの肉・魚・野菜はNG)
鉄分には、歯ぐきのハリ、および、歯周組織を健康な状態に保つ作用があります。
{サプリメントで栄養素を摂取する方法も}
上記の栄養素は自然の食べ物から摂取するのが望ましいです。
自然の食べ物からの摂取が望ましいですが、日々の生活を送る中で、
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食事を取る時間がない
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料理を作るのがめんどくさい
場合もありますよね。時間がない・めんどくさいときは、サプリメントで栄養素を摂取するのもOKです。
【本歯が入るまでは、患部にできるだけ刺激を与えないようにしましょう】
インプラント手術後は、本歯の人工歯が入るまでに以下のような治癒期間が必要になります。
[インプラント手術後の治癒期間の目安]
上顎のインプラント:平均で6ヵ月程度
下顎のインプラント:平均で3ヵ月程度
(※)患者様や口腔内の状態により、治癒期間が異なります。
歯周病治療や骨造成が必要なケースでは、治癒期間を含む
全体の治療期間が1年以上かかる場合もあります。
インプラント手術後、特に注意していただきたいのが、焼肉などの弾力のある肉です。焼肉はお好きなかたも多いため、インプラント手術後、仮歯で焼肉を噛んでしまうことも。
仮歯で焼肉を噛んでしまうと、噛んだときの刺激によって顎の骨とインプラント体の結合が阻害されやすく、再手術が必要になる場合もあります。
本歯が入るまでは、食事中をはじめとして、患部にできるだけ刺激を与えないように注意しながら治癒期間をお過ごしください。
数ヵ月の治癒期間を経て、本歯の人工歯が入った後は、弾力のある肉や繊維質の魚・野菜をしっかり噛んで食事を楽しめます。