先月のブログでは、歯周病の進行度別の症状について、ご説明をさせていただきました。
歯を失うこともある怖い歯周病ですが、歯周病の怖さは歯・歯周組織のみに留まりません。
歯・歯周組織のみに留まらず、歯周病は
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糖尿病
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心筋梗塞・脳梗塞
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誤嚥性肺炎
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流産・低体重児出産
などの全身の病気・異常と深い関係があるのではないか、と推測されています。
今回は、「歯周病と全身の病気・異常の深い関係」のお話です。
①糖尿病
◎歯周病菌が出す炎症性物質が原因で、血糖値をコントロールしにくくなる可能性があることが指摘されています
歯周病と深く関係しているとされる全身の病気においては、代表的なものとして、糖尿病が挙げられます。
以下のようなメカニズムにより、歯周病が進行したかたは糖尿病も進行しやすくなることが研究によって報告されています(※)。
[歯周病の進行により、糖尿病が進行しやすくなるメカニズム]
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歯周病が進行し、顎の骨の中を通る血管の中に歯周病菌が入り込む
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血管の中に入り込んだ歯周病菌が血液に乗って全身を駆け巡る
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血液中の歯周病菌がサイトカインなどの炎症性物質を出す
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炎症性物質が原因でインスリンの働きが弱まり、血糖値をコントロールしにくくなる(=糖尿病が進行しやすくなる)
{糖尿病の進行によって歯周病が進行することも}
糖尿病が進行しやすくなる原因の一つとされる歯周病ですが、反対に、糖尿病の進行によって歯周病が進行することも。
糖尿病が進行すると血糖コントロールの異常が原因で免疫機能が低下し、歯周病が進行する場合があります(歯周病菌などの細菌に対する抵抗力が低下し、歯周病が進行する)(※)。
(※)Stöhr, J.et al.「Bidirectional association between periodontal
disease and diabetes mellitus: a systematic review
and meta-analysis of cohort studies」(2021)より引用。
②心筋梗塞・脳梗塞
◎歯周病菌が出す内毒素や炎症性物質が原因で血栓ができ、心筋梗塞・脳梗塞をひき起こす可能性があることが指摘されています
研究では、以下のようなメカニズムにより、歯周病は心筋梗塞・脳梗塞と深い関係性があるのではないか、と指摘されています(※1)(※2)。
[歯周病の進行により、心筋梗塞・脳梗塞が起きやすくなるメカニズム]
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歯周病が進行し、顎の骨の中を通る血管の中に歯周病菌が入り込む
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血液中の歯周病菌が出す内毒素や炎症性物質が原因で血管の内壁が傷つき、血栓ができる
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血管内にできた血栓が原因で血液の流れが滞り、心筋梗塞・脳梗塞をひき起こす
(※1)東京大学大学院医学系研究科
「日本人男性労働者における歯周病と
心筋梗塞の関連性に関する5年間の追跡調査」
(2014)より引用。
(※2)A Lafon,B Pereira,T Dufour,V Rigouby,M Giroud,Y
Béjot,S Tubert-Jeannin「Periodontal disease and stroke:
a meta-analysis of cohort studies」(2014)より引用。
③誤嚥性肺炎
◎歯周病菌が出す炎症性物質がのどの筋肉反応を低下させ、誤嚥性肺炎をひき起こす可能性があることが指摘されています
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、唾液や飲食物が誤って肺の中に入り込むことでひき起こされる肺炎です。
誤嚥性肺炎は高齢者のかたの死因において大きな割合を占めており、日本人の死因の第6位となっています(※)。
(※)厚生労働省
「令和5年人口動態統計月報年計(概数)の概況」
(2023)より引用。
一般的に、高齢者のかたは、加齢によるのどの筋肉反応の低下(衰え)によって誤嚥性肺炎がひき起こされるケースが多いです。
のどの筋肉反応の低下のほか、研究では、以下のようなメカニズムにより、歯周病が誤嚥性肺炎をひき起こす可能性があることが指摘されています(※)。
[歯周病菌が原因で誤嚥性肺炎が起きやすくなるメカニズム]
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唾液と共に、口腔内の歯周病菌がのどの奥に流れ込む
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のどの奥に流れ込んだ歯周病菌が出した炎症性物質が原因で、のどの筋肉反応が低下する
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その結果、本来は食道に入るはずの唾液や飲食物が誤って肺の中に入り込み、誤嚥性肺炎がひき起こされる
(※)岡山大学大学院医歯学総合研究科
「歯周病原性細菌によって起こる誤嚥性肺炎の
分子免疫学的病態の研究」(2002-2003)より引用。
④流産・低体重児出産
◎歯周病菌が出す炎症性物質が子宮を収縮させ、流産・低体重児出産をひき起こす可能性があることが指摘されています
歯周病は流産・低体重児出産との関係性も。
現時点での推論になりますが、研究では、血液中の歯周病菌が出す炎症性物質が子宮を収縮させ、流産・低体重児出産をひき起こす可能性があることが指摘されています(※)。
(※)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
「歯周病と産婦人科疾患の関連性」
(2012)より引用。
【毎日の歯みがき・歯間清掃によるセルフケア&歯科医院で受ける定期検診を継続し、歯周病の進行を抑えましょう】
歯周病・むし歯など、お口の病気の進行を抑えるには、以下の2つのケアを継続することが重要です。
[お口の健康の維持に重要な2つのケア]
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ご自身で行う、毎日の歯みがき・歯間清掃(セルフケア)
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歯科医院で受ける定期検診(検診+歯のクリーニング)
歯周病の進行を抑えることで、歯周病が原因で起こり得る全身の病気・異常の発生リスクの低下にもつながります。
– 保険にて、エアフローを用いたGBTメンテナンスによる定期検診を行っています –
浜松歯科では、保険にて、エアフローを用いた「GBTメンテナンス」による定期検診(歯周病治療)を行っています。
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上記を用いることで、歯・歯周組織への刺激を抑えながら歯のクリーニング・歯石取りを行える点がGBTメンテナンスの特徴です。
従来のPTCによる保険の歯のクリーニング・歯石取りが苦手・痛い、というかたには、GBTメンテナンスが選択肢として挙げられます。
大切な歯・歯周組織の健康を守るために、毎日のセルフケアと併せて、歯科医院で定期検診を受けましょう。